新卒採用職種として見かけることも多くなった「ファーマコビジランス(PV)職」.
調べてみても具体的な仕事内容について紹介されていることは少ないですよね.
本記事では現在PV職として働く筆者(ひるね子)が以下の内容を解説していきます.
- ファーマコビジランスの意義や目的
- PV職の具体的な業務内容
製薬企業でPV職として働くひるね子です.
夫のりきどです.
今回はPVのお話だね.色々と聞いてみたい.
おっけー!
現役PV職の私がPVについて解説していきます!
ファーマコビジランスってなに?
ファーマコビジランス(Pharmacovigilance)とは
“Pharmaco(薬の)” と “vigilance(監視)” を組み合わせた「医薬品安全性監視」という意味を持つ造語です.業界ではよく PV(ピーブイ)と略されます.
PV の大きな目的は以下の通りです.
- 自社薬の安全性に関する情報(有害事象・副作用)を収集・評価し,規制当局1日本はPMDA(医薬品医療機器総合機構)へ報告する.
- その情報を医療従事者や患者さんに伝えることで,適切に薬を使っていただき,副作用の発生や薬害を未然に防ぐ.
「リスクのないクスリはない」とよく製薬業界では言われますが,
PV職はその「リスク」を最低限に抑えて,患者さんのベネフィットを最大化するのが大きな目的です.
有害事象
有害事象は薬を使った後に起こった「あらゆる好ましくない」事象を指し,その中でも「薬との関連性が否定できないもの」は副作用と定義されます.
PV職にはどんな仕事があるの?
一口にPV職といっても,実は多岐にわたる仕事で構成されています.
では様々なPV業務について,以下でざっくり説明します!
個別症例収集評価業務
薬を処方された患者さんに起こった有害事象・副作用の情報をデータベースに入力し,薬との因果関係等を評価し規制当局へ報告します.
主な情報源は以下の通りです.
- MRさんからの報告(医療機関訪問時に知った情報)【メイン】
- 学会発表の抄録や論文
- 治験
- 市販後調査
- お客様窓口相談窓口(コールセンター)
- TwitterなどのSNSやブログ などなど...
新卒で入社した人がまず担当することが多いのが,この業務かな!
治験も含まれるし,情報収集の範囲がすごく広いね.
そうそう.
それに決められた期日までに当局へ報告しないといけないので,スピードと正確さも求められます.
集積評価業務
安全性情報は随時報告する個別症例以外にも,集積された安全性情報を評価して定期的に規制当局へ報告する必要があります.
個別症例の蓄積された情報から副作用の傾向を分析し,医療機関にレター2注意喚起する文書を出すべきか,添付文書等を改訂するべきか,措置を検討する仕事です.
また,集積評価の結果,医薬品リスク管理計画書3RMPと呼ばれる,医薬品ごとにリスク管理体制や計画について記した文書の策定や見直しを行います.
個別症例をある程度経験した人や,製薬業界で経験を積んだ人が担当することが多いイメージ.
PMS(市販後調査)関連業務
薬の承認後,実際に臨床現場で使用される条件は,治験時と異なることが殆どです.
そこで薬が上市されたあと,安全性や有効性を監視するためにPMS(市販後調査)が実施されます.
PMS関連業務はこの調査を計画し,実施状況を管理するお仕事です.
この調査で得られた情報は薬の再審査4新薬は承認後一定期間が経過した後に、市販後に収集されたデータをもとに、承認された有効性・安全性について、再度確認する、再審査制度が設けられていますに使用される重要な情報となります.
主に「PV職」と称される業務は上記3つかな.
その他に安全性に関わる業務はあるの??
もちろん,たくさんあります!
ではその他の安全性関連業務を見てみましょう~.
安全性資材作成・改訂業務
添付文書や患者さん,医療機関向けの資材などを管理し,必要に応じて改訂するお仕事です.
添付文書の管理部署と,現場向けの資材管理部署は分かれていることが多い印象です.
お客様窓口
大体の企業は外部のコールセンターにお客様窓口を設置して,医療従事者や患者さん本人からのお問い合わせに対応します.
その際に副作用や有害事象に関する情報を得ることも多く,その場合は企業のPV部に情報が報告され,個別症例評価業務が発生します.
承認申請関連業務
医薬品を国に申請する段階から,PV職が関わることもあります.
治験時の安全性情報を承認申請用にまとめたり,添付文書(案)や,医薬品リスク管理計画書(案)を色々な部と連携しながら作成します.
「色々な部」には臨床開発部も含まれるし,このあたりの連携は強いと思います.
安全性データマネジメント
近年,市販後の調査でリアルワールドデータを用いたデータベース調査を用いることが認められ,適切なデータをどう抽出・処理し,的確に分析・評価するかに注目が集まっています.
そんな中,疫学や統計,データマイニングのスペシャリストを集めて各社で専門部署を新たに創設している,大変ホットな業務分野です.
SASやR,SQL,Pythonなどを駆使したデータマネジメントの専門的スキルを求められるみたい!
データマネジメントは近年どこでも生まれているんだね.
以上がPV職と,それに関連する主な安全性業務です.
大手企業では複数部署にわたって対応している一方,規模が大きくない会社では一つの部署でまかなっている,なんてこともあります.
最後に…
PV職は他職種と比べ,開発段階からその薬が販売されなくなるまで,薬のライフサイクルに一番長く関わることのできるお仕事です.
また,PV業務は企業が医薬品を販売するために欠かせない,非常に重要な業務です!
上記を参考に,就職活動時は是非,入社後自分がどんな業務をするのか企業担当者に質問してみましょう.
製薬企業の陰の存在PV職…これからもっと注目されるといいなぁ!
世間一般の知名度は低いように思うけど,新薬開発も含め幅広く活躍していることを業界人としてはしっかりと理解しておかないと!